奈央と出会えたから。<431>

麻呂 2011-06-26投稿
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* * * * * *

お正月の朝は、


あたしは結構好きだ。


得に元旦の朝は。


新しい年の始まりだから、


新鮮な気持ちになれる。


そんな気がして。



『奈央。起きてるの?いつまで寝てるの、もうお昼よ。

年賀状届いてるわよ。』


階下で母の声がする。

この声を聞いた途端、

いつもと変わり無く、

今年も繰り返される毎日に、

ふと気付かされる。



『はぁい。もう起きてるわよ。』


本当は今起きたばかりだケド。


階下を下りて行くトキ、


ぷぅんといい香りがした。


煮物のお出しの匂いかな。



『お雑煮と旨煮が出来てるけど、食べるでしょ?』


『うん。』


あたしが食卓のイスに座ると、


母は、暖かいお雑煮と旨煮を出してくれた。


『どう?旨煮は鶏肉 いっぱい入れておいたわよ。

あなたのリクエスト通り。』



『あは。ありがとうお母さん。美味しいわよ。』



旨煮も美味しいケド、


母と一緒に過ごせるこの時間が、


あたしは一番大好きなんだ。



『奈央。はいお年玉。普段のお小遣いが少ない分、奮発しといたわよ。』


母は、そう言ってあたしにミッフィーの絵が付いたポチ袋をくれた。



『わぁ。お母さんてば。いいよ、こんなにたくさん。

あたしは普段、必要な物は買ってもらってるし。』


中には、壱万円札が一枚入っていた。


お母さんが昼も夜も働いて稼いだお金。



『いいから取っておきなさい。

奈央には普段、色々家事を手伝ってもらってるから、お母さん感謝してるのよ。』



『そんなの当たり前じゃん。

お母さん、ふらふらになりながら、あたしの為に働いてくれてるじゃん。

家事くらい手伝わせてよ。』


少しムキになって話すあたしに、


母は少し笑ってこう言った。



『まだ中学生なんだから、素直に甘えてなさい。

ほら、お雑煮冷めちゃうわよ。』


その後に返す言葉は、


あたしの口からは出て来なかった。


お母さんのお雑煮と旨煮が、とても美味しかったのと、


お母さんの言葉が、とても心に響いたのとで、


涙が出そうになったから。

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