「そう僕の求めるものはぁ…」
男はよだれを垂らしながら前屈みになり両手を横にだす。
ドカ!!
ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!
蹴り。
ただひたすら蹴り蹴り蹴り蹴り蹴り。
男は横たわっている戒の腹部をひたすら蹴り続けた。
「ごはっ!!」
声にならない。
いや、声が出せない、息すら出来ない。
戒が出来るのは胃液をだすことと苦悶の表情を浮かべながらただ丸くなることだった。
「そうそう!僕が求めるのは君たちのそんな顔!!くくくくく…いやぁ、興奮するなぁ…。」
男は苦しそうな戒を見ながら子供のようにはしゃぐ。
「僕はさぁ、人の不幸が大好きなんだぁ。苦しそうな顔、痛そうな顔、絶望した表情。どれもたまらないねぇ…。僕をぞくぞくさせてくれる。僕を興奮させてくれる。それだけで生きてるっ気にさせてくれるんだよぉ。」
狂っている。
この男の過去に何があるかはわからない。
ただこの男は人間として大事な部分がぶっ壊れている。
男はさらに醜く歪んだ笑みを浮かべる。
「この前の老夫婦はよかったねぇ。くくくく…付き合いが長い分だけお互いの痛みが辛そうにしてくれた。指を一本一本切り落としたり腕をそぎ落としてあげたなぁ。考え付く限りのことをしてあげたよ。今度は一体何をしてあげようかなぁ?」
男は回りを見渡している。
戒はこの男に恐怖しながらも、この状況を抜け出す方法を考えていた。
ここでこそ魔法をと。
しかし手は後ろで縛られている。
さらに手を縛っている縄は手首に回れており、手のひらで触れることは出来ない。
例え触れれたところで温度を上げるだけでは縄は切れない。
現状打開策は見たらず、戒はただただ焦り恐怖した。
「んっ…」
そんな中すぐ隣に倒れていた明が目を覚ました。
「あれ?私なんで寝て…」
明の意識がはっきりしていく。
自分が縛られているという状況よりもすぐそばの戒のほうに気がいった。
「戒にぃ?ちょっと、戒にぃ!大丈夫?戒にぃ!!」
明は戒の名を叫んだ。
心配そうな顔をして。
そんな様子を見ながら男は何かを考えている様子だった。
何かが浮かんだのかふいに男の顔がまた歪んだ笑みで染まる。
「いいことを…ほんとにいいことを思いついたよ。」