Part five # 転入生 #
今では中々見られない、のどかな草原。
風が吹き、草や木がさあさあと音をたてて揺れている。
『いっくーん!はやく、こっちこっち!』
その草原を、二人の子供が駆け回っていた。
一人は少年、一人は少女だ。
『まってよお、はーちゃあん』
いっくんと呼ばれた少年が、少女の名を呼ぶ。
鬼ごっこでもしているのだろうか、少女が逃げ、少年がそれを追いかけている。
『はやくはやくーっ』
少女が少年を呼び、手を振った。
刹那――
――ザザザ……ッと、何の前触れもなく、世界はノイズ音でしめられた。