「……あれ?」
がらり。
教室の扉を開け、中へ入ると、わたしはみんなの様子がいつもと違う事に気が付いた。
「ねぇねぇ、何かあったの?」
わたしは、自分の席に荷物を置くと、後ろの席の田中さんにそう訊いた。
「……転入生が来るらしい」
ぼそりと田中さんはそう答えた。
「転入生?また?」
「……うん」
こくり。
田中さんは頷いた。
「……こら、何をやってる!全員、早く席につけ!」
すると、担任の左藤先生が怒鳴りながら教室に入ってきた。
わたしは、鞄をしまい、急いで席についた。
全員が着席し、教室は沈黙に包まれる。
一拍の間をおいて、沈黙を破るように左藤先生が口を開いた。
「――もう全員知ってると思うが、今日からこのクラスに仲間が一人増える」
その言葉を聞いて、教室の皆が一斉にざわめきたつ。
「……入れ」
左藤先生が、視線を教室の扉の方へ動かした。
すると、一人の男の子が教室に入ってきた。
男の子の姿を見て、一部の女の子たちが「きゃ……」と小さな黄色い悲鳴をあげた。
理由は簡単、その男の子がかっこよかったからだ。
綺麗な黒髪に、端正な顔立ち。身長は平均よりちょい上くらいで、細身。
男の子は教卓の前まで来ると、クラス全体を見渡し――
「藤堂郁です、宜しく」
――そう言った。