「もしかしたら私たちが出会えたのは奇跡かもしれない。」
「もしかしたら俺たちが出会えたのは奇跡かもしれない。」
『いつも一緒にいる。』
金の長い髪に青の瞳。
ピンクを基調としたドレスが彼女を飾り立てていた。彼女の名前はリア。
リアの家は由緒正しい家柄の一人娘だが、他とは違うせいで疎まれてきた。
そんなどこか刺々しい雰囲気を纏ったリアに近付こうとする者はいなかった。
周りは今日行われるパーティーの華々しい空気に満ちている。
(甘ったるい匂い…。気分悪い……。)
既に日が傾きかけており、会場にはたくさんの人が集まっていた。
「お嬢様、そろそろ参られませんと奥様に叱られますよ。」
「ええ……。」
か細い声が少し震えていたのをリアの執事は聞き逃さなかった。
この辺りでは珍しい、というか不吉の象徴とされてきた黒の髪と瞳を持った青年が空を仰ぐ。
「くだらない。」
彼は機嫌が悪いのを隠そうともしない。
そんな彼の態度など気にもとめてない様子で女執事が彼の服装を正す。
「本日ばかりは欠席は駄目ですよ。ティーアス家の現当主様の第30年目ご就任祝いの会。ここで行かなければアスペルト家は信用を失いかねません。
ただでさえご当主様がご出席できませんのに……。」
そこまで言うとさっと空を見る。
もう大分空が暗くなってきていた。
「そろそろ参りましょう、レクス様。」
レクスはその一言に静かに頷いた。
これが全てを狂わせたのだとしたら……。
幸せかもしれない。