霧の立ち込めた、深い森の中に迷い込んでしまった若い男が居た。
男は、銀行強盗をして逃走の途中、峠の崖から転落したのだった。
「ひでぇ目に、会っちまった。計画は巧くいってたのにな。」
男が道無き道を、草木を押し分け進んで行くと、辺りは、スッカリ日が沈みかけて居た。
森の樹木が、光を遮るからだろうか。
男が、野宿を覚悟していた時、遠くに、僅かな光を見つけたのだった。
ありったけの力と勇気を振り絞り、光の方向へと向かった。
其処には、小さな家が建っていた。
窓には、カーテンも無く、中には、弱々しい老人が一人、ワインらしき物を呑んで居た。
「あいつ一人なら、襲えるな。周りは深い森の中だ。」
男は、扉を蹴破ろうとしたが、何故か老人がドアを開けて、優しくむかい入れたのだった。