何故、老人は、俺がこの家に近寄った事を知ったのだろうか。
不思議に思いながらも男は家の中に入った。
「ようこそ、こんな森の中まで、台所に、食い物は有るし、この通り、酒も有る、一緒に呑み話をしませんか。」
老人の話では、食い物も有ると言う事だな。
暫く、此処でホトボリを、醒ますかな。
男は、大事に持って居た、大事な現金入りのバッグを脇に、置くと、老人と打ち解ける様な話を始めたのだった。
老人も、寂しかったのだろうか、男の素性を聞かなかった。
男は食事を、ご馳走に成り、酒を呑み始めると、次第に眠く成ってきた。
翌日、目が覚めると、老人の姿は、無かった。
暫くすれば、帰るだろうと、待ってはみたが、一向に帰って来ない。
仕方無く、家を出ようとしたが、体が、思う様に動かない。
小さな鏡を覗き込むと、其処には、昨日の老人の顔が有った。
男は、何か解った様な気に成っていた。
「この、森の家の祟りか、そもそも、こんな所に家が有り、老人の一人暮らしが有るなんて。」
食料は、月に一度、便利屋が運んで来る。
一言も言わないのは、俺を、あの老人と思って居るのだろうな。
悪人が来るまで、俺は死ねないみたいだな。
男は、強盗で得た金が更に増えて居る事を知り、覚悟を決めて、椅子に座り、ワインを飲みながら、何時来るか解らない、悪人への、イメージを考えながら、永い時間を生き抜いていくのだった。