「リア、何してるんだい?」
どこか怒っているような声に、リアはとられていた手のことを思い出した。
慌てて手を引く。
さっきまで強かったレクスの手には、ほとんど力が入っていなかった。
「えっと…おば様…」
とっさに口を開いたが次の言葉が出てこなかった。
「リア、お前は下がっていなさい。」
「…はい……。」
リアはその言葉に部屋へ戻ろうとした。
すると背を向けた直後、いきなり後ろに引かれた。
驚きで声も出なかった。
そのまま後ろを振り向くとレクスだった。
指先に口づけられた。
そして、そのままの体勢で囁かれた。
『私の使用人、リズを外に待たしてあります。』
それに従って下さい、と。
リアは頷きもせず一礼してその場をあとにした。
「ティーアス卿、申し訳ありません。つい、リア様が気になったもので。」
「あれはやめておいた方がよろしかろう。そんなことよりも例の件について話を聞かせていただきたい。」
大広間の奥にある小部屋の一角を示した。
レクスは小さく頷くとそこへ向かうのだった。