「アキちゃん。久しぶり。」
『どうして、コウタくんがここに?』
「それは話せない。でも、アキちゃんに伝えたい事があるんだ。」
コウタは、ゆっくりアキに近づいた。
「タクヤという人物は、実は俺だったんだ。」
『どう…いうこと?』
アキは困り果てる。
「タクヤという人物に俺が憑依して、悪く言えば操っていたんだ。」
アキは驚いて、言葉に出来なかった。
「…ごめんね。アキちゃん。俺今でもアキちゃんの事が好きだから…少し嫉妬というか…何ていうか…。」
アキは、首を横に振った。
『ううん。コウタくんって、そういう人だったもん。』
「ありがとう…。今の俺にとっての幸せは、アキちゃんが彼氏のもとで、幸せになる事だったことを、忘れていた…。」
アキの表情が一瞬曇った。コウタは、それを見逃さなかった。
「うまく…いってないの?」
『実は…』
アキの手が、ゆっくりと動き始めた。
『私ろう学校に転校することに決めたの。』
「ろう学校って…耳が聞こえない人が行く…。」
アキは頷いた。
『だから、もう今の人とは別れてしまう…。』
「そうか…。」
コウタは、深いため息をついていた。