リアが大広間から出ると廊下の奥の方に二十歳前後の仕事服を纏った人がいた。
リズだ。
リアは近付きリズに話しかけた。
「あなたがレクス様の使用人のリズさん?」
リズは無言で頷くと奥へと向かいだした。
リアは少し考えてからリズについていった。
リズが止まったのはある部屋の前だった。
「どうぞ。」
リズが扉を開け、入るように促した。
「どうする気?主人のところに行かなくていいの?」
「これは主のご意向ですのでご安心を。」
その言葉にリアは警戒した。
(ご意向ってことはあの人の命令……。本当にどうする気なの?)
リアはしばらく考えていたが、奥から人の来る気配がしたのを感じて慌てて部屋へ入った。
リアが入ったのを確認してリズは扉を閉めた。
「リア様、主はもう少ししたら帰って参りますのでお待ちください。」
途端甘い匂いが部屋を包んだ。
落ち着く匂いについ警戒が緩みそうになる。
「紅茶は苦手だとお聞きしました。ココアは大丈夫ですか?」
「大丈夫…だけど……。」
「ではこちらでお待ちください。」
それからリアはリズと一言も話すこともなくレクスを待ったのだった。