珍しく、クラス中シーンと静まり返り、
みんな、渋川の一言一言を真剣に聞いていた。
ユカが転校するコトは、合唱コンクールの前からクラスメイト達には知らされていたケド、
渋川が、あたし達の卒業と同時に、この学校から離れるというコトは、
今、初めて知らされたコトだった。
ガラッ―ー‐
その時、教室の扉が勢いよく開き、
見ると、そこには聖人が立っていた。
『‥‥ンだよ、みんなシケたツラしやがって。
お通夜じゃねぇんだからよ。
秋田谷のお別れパーティーでも、でっかくやろうゼ!!』
聖人の一声に、
みんなが聖人に注目する。
渋川も一瞬、教師という立場を忘れ、
ボーッとした表情をしてたケド、
すぐにこう言い放った。
『き、き、北岡ァ――!!
お前、遅刻した分際で何を偉そうにしている!!
さっさと席に着かんか!!』
渋川は、怒鳴っているにもかかわらず、
今にも泣きそうな顔をしていた。
あたし達が卒業するまで、あと1年。
ユカと一緒に過ごせるのは今学期まで。
渋川は、ただの担任としてだけの感情ではなく、
ひとりの人間として、
あたし達を見てくれるようになった。
そんな渋川のコトを、
今はみんな、
大好きなんだと思った。