時間が経つのは意外とゆっくりなんだと感じる日々だ。
俺は、トルコに向かう飛行機の中で、悶々とした時間を過ごしていた。
そう…
デカ女は、本当に一歩踏み出して‥アメリカだ。俺の隣には、デカ女が行ってしまった為に社長がビタ付けである。
「秦くん やってくれたわね!おかげで優秀な秘書を一人失ったじゃないの。」
「あっ…すっすみません‥」
「でも…おかげで最高のモデルが戻ってきそうだわ。あなたも負けてられないわね。自分で蒔いた種よ」
その通りだ。
でも…あの時告っても、上手くいかなかったと思う。
ちょっとだけ、デカ女の人生を進めてやりたかった。あいつの耀く時間を共有出来たら最高だろうと思った。
恋とは違うでも…愛なんてものもよくわからない。
そんなこんなを考えて飛行機を降りると、魅惑の国トルコだ!!
なんとも言えない雰囲気に頭中はすっかり仕事モードに切り替わった。
異国というのは、感覚が吸い込まれていくようで…。この時ばかりは、時間が経つのが早かった。
日本に戻ってきて、数週間後、社長が一冊の雑誌を俺の前に置いた。
ページをめくると、見開きでRIONAが載っていた。「すげぇっ!」
アメリカの有名な雑誌でそれも誰もが知っているブランドの広告塔だ!
RIONAは、今までのイメージと違って、妖艶さや悪女さ儚さなど自分の中に湧いてきたありのままの感受性に磨きがかかっていた。
俺は、デカ女のプロとして戻った底力に圧倒され、少し遠くに行ってしまったように感じた。
俺は、トルコ撮影の写真のチェックをしに事務所にやってきた。
撮影が続き、事務所に来るのは2週間ぶりだった。
社長とカメラマンのジロさんと編集者、俺…。
ん…?
見かけない女がひとりいた。
(新しい秘書か?)
席に着くと編集者が口火を切った。
「秦くん。今度君と一緒に特集考えているんだ。挨拶がてら一緒に来てもらったんだ」
「こんにちは、宇井響(ひびき)です。よろしくお願いします。」
「村上秦です。
こちらこそ よろしくお願いします」
響さんは、23歳との事だが、鋭い目力だけでなく品の良さを感じる、これから活躍するであろうオーラがある子だ。
打ち合わせが終わり、みんなで呑みに行く事になった。
独りだとデカ女の事考えちまうので、正直、呑みたかった。
久々の酒はまわる。化粧室に向かうと響さんが化粧室から出てきた。
いきなり
俺の唇を奪った。