ガチャ!
「うわ、危ねっ……って、菜々ちゃん?」
私がドアを開けると買い出しから戻ってきたヤスさんがいた。
「す、すみません!」
私が慌てて謝っていると、ぐいっと左手を掴まれた。
「おっ?何なに?」
ヤスさんが、私と私の手を握っている綾川くんを交互に見ながらからかうような笑顔になった。
「槇原さん、行こ…。」
ぐっと手を握りなおされ、引かれるままに店を出た。
「……あ、綾川くん?」
呼びかけるが少し前を歩く綾川くんは振り向いてくれない。
…あ、なんか、前もこんな事があったな…。
手を引かれながらそんな事を考えていると、急に綾川くんが止まったので、私は綾川のリュックにボフっと顔を埋めてしまった。
「…ごめ」
「槇原さん、俺のこと好きなの?」
見上げると、思っていたより近くに綾川くんの顔があって見下ろされていた。
「…あ、の」
「さっき『好き』って言ったよね?」
そう何度も確認されると辱めを受けている気分になり、頷くので精一杯だった。
……ぐいっ
「ヤバい…嬉しすぎる」
そう言って綾川くんの腕が私の首周りに伸びてきて、そのまま抱き締められた。