夏の蛍・3

柊翔 2011-07-18投稿
閲覧数[475] 良い投票[0] 悪い投票[0]

光樹を見送った伸一が堤防を歩いていた。

「…うわっ。何だこの吸い殻…」

見ると、川面にタバコの吸い殻が散乱していた。

「川の水が汚れる訳だよなぁ…」

見かねた伸一が、同じように川面に浮いていた紙コップで吸い殻をすくい取った。

「よし。これで少しはきれいになっただろう…ん?」
きれいになった川面に何かが浮いていた。

「…何だ?」

浮いていた何かを葉っぱで取り上げた。

「…さなぎ?蛍のさなぎじゃないか!」

図鑑で見た事のある蛍のさなぎを手のひらに乗せる伸一。

「…がんばれ!」

伸一が優しくさなぎを水草の上に置いた。


その夜。静かに水の流れる音がする川岸の水草の上で蛍のさなぎが青白く微かに光っていた。

(…目覚めの時だ…)

(…天帝様…)

さなぎの放つ光が少し強くなった。

(…天帝様…。私が、人間として生まれる事は出来ませんか…?)

(何を言っている…。現世のお前は蛍として生まれる事が決まっておる。まして、生き物の中で一番野蛮な人間に生まれたい等と…)

川岸の草が風に揺れる。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「柊翔」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]
人気雑誌多数掲載
脂肪溶解クリーム


▲ページトップ