わからない…私達に何が起きたの?
わからない…なんで私は泣いてるの?
わからない…なんで隼人なの?
「桜にとって悪いことが起きたらこのミサンガが身代わりをつくってくれる」隼人の言葉がよみがえる。
私にとっての身代わりは隼人だったの…?
隼人は今、集中治療室にいる。現在時刻、午前5時。
桜 「ふっ…うぅ…」
泣いても仕方ないのに涙が止まらない。
桜 「うぅ…ひっく…」
もし隼人に何かあったらどうしよう…永遠に目を覚まさなかったらどうしよう…
そう考えるだけで頭がおかしくなるぐらいに怖くてたまらない気持ちになる…
豪 「桜っ!」
暗い待ち合い室の廊下から豪や芽衣、太一くん達が走ってくる。
桜 「みんな…なんでここに…」
友美 「さっき電話がかかってきてみんなで来たの…それより…」
太一 「隼人が事故ったって本当か?」
桜 「ー…っ」
ミノル 「隼人…死んじゃうのかな…」
桜 「…なさい…ごめんなさいっ!」
芽衣 「なんで桜が謝るの?」
桜 「全部…全部私が悪いの!隼人が私をかばったせいで…私がもっとちゃんとしてればっ!!」
留季 「桜…」
豪 「…桜…俺はっ」
豪が私に何かを言おうとした時…
治療室の扉が開いた…
桜 「隼人っ!」
でも出てきたのは…
緒方 「隼人くんの担当医、緒方です」
隼人じゃなかった…
桜 「隼人は大丈夫なんですか!?」
緒方 「…非常に言いにくい事なんですけど…隼人くんは体を強く叩きつけられ脳内の血管もかなり切れてました」
太一 「それで隼人は…」
緒方 「一命はとり止めました」
ホッとみんなから安堵の息がもれた。
でもそれもつかの間だった…
緒方 「ですがもって2年半です」
え? なに?
桜 「せん…せい…今…なん…て?」
緒方 「隼人くんの余命はあと2年半です」
それって…隼人が2年半後に死ぬってこと?
……やだ…なんでこんな時に限って…
『桜』
隼人の甘い声が聞こえんのっ!!
看護師 「道を開けてください。大空さん通ります」
目の前に横たわって目をつぶっている隼人が運ばれてくる…
包帯がたくさん巻かれてて痛々しそうに血がたくさんついてる。そんな隼人を見て私は隼人と出会ってから今日までの隼人との思い出が頭の中をよぎった。
『将来は力士になりてぇーのか?』
桜 「隼人…」
『よかった…桜にケガがなくて本当によかった…』
桜 「隼人…」
『このピアス、龍が桜を守ってるみたいだろ?』
桜 「隼人…」
『俺も桜が好きだ』
桜 「隼人ぉ…」
その隼人が“いなくなる”
そうすればあの優しい笑顔は見れなくなる…
桜 「いやぁーーーーーっ!!!」
2年半後にはこの世に大空隼人という存在はいなくなるー…。