「…。」
『私…カズヒロが好きなの。』
その手話を聞き、アツコも少し言い過ぎたと思ったようだ。
「まあ、無事ならそれで良かった。」
アツコはそう言って、
「でも、ろう学校行くんでしょ?」
『アツコ叔母さん…。』
アキは、いつもの叔母さんに戻って心からうれしかった。
「その間、どうするつもりなの?」
『その間って?』
「好きなら好きって…言ったり、たくさん遊んだり…。ろう学校に行ったら、出来なくなるのよ。」
『そうだね…。』
アキは、ドレスを脱ぎ、私服に着替えて、家を飛び出した。
「まったく…。」
アツコはアキの姿を、笑いながら見守っていた。
カズヒロはその頃、部屋で寝ていた。
アキラもノリコも、何も言わず、ただ「おかえり」と言ったのみ。
「これが…カズヒロの強さだ。」
大切な人を守る…。こんな子に育って良かった。
ノリコの目には涙。
「俺たちも…カズヒロに教えてもらうところがあるよな。」
「そうね…。」
すると、インターホンが鳴った。
「誰かしら…。」
そこには、アキが立っていた。
「あら、アキちゃん。」
アキは、お辞儀をしたが、話せずしどろもどろしていると、
「あ、カズヒロ?」
アキは頷いた。