誤魔化し続ける彼女。
「紫音!」
紫音はますます目を反らす。俺は紫音の左手を掴んで引っ張った。
ヌルッとした感触がする。
血だ。
俺の手には紫音の血がついた。
紫音は泣きそうになっていた。
「自分で切ったの?」
紫音は何も答えてくれない。
とりあえず、彼女の腕にハンカチを巻き付けた。何でだよ、リストカットなんて───
紫音の血は固まってきた様だった。
二人で理科室の隅っこに座る。
「何で切ったの?なんとなくはなしね。」
紫音は黙って何も答えない。
「なんかあったら俺に言えって言ったじゃん。」
クラスでの紫音の味方は俺だけだった。
「そんなに俺が信用出来ない?」
「…なの。」
「え?」
「嫌なの、学校がもう嫌だ。来たくない。」
やっぱりいじめの事だ。こいつが悪い子には思えないけど。
「親とかに相談出来ないの?」
「お母さんには言えない。」
「正直に言った方がいいと思うけど。」
紫音はまた黙っている。俺は立ち上がった。
「じゃあな、紫音。もう切るんじゃねぇぞ。」
俺は理科室を出た。
何で俺って最期まで話を聞いてあげられないんだろ?
俺って弱いな…。