「リア!」
「…っ……!」
「どうしたの、こんなところで……。」
抱えられるように肩にまわされた手を、リアは払いのけた。
リアはまだ温もりがある肩を抱き寄せるような仕草をした。
明らかに警戒している。
(見られた、か……。)
レクスは一歩引くと一礼をして踵を返した。
「…ディル……?」
レクスの後ろ姿がディルと重なった。
(あの後はどうなったのだろう……。)
ルカの伝えようとしていたこととは何だったのだろうか。
(きっといいこと。)
少しだけ頬を染めながらも嬉しそうに話していた彼女。
見てるのが辛くて目を背けた。
そういえば
『あいつらの目は変わらない!』
誰かがすぐ近くでそう言った。
誰だったかは覚えていない。
いや、知らない。
低い女の声。
新たに感じたうすら寒さに、リアは肩を抱いていた手に力を込めた。
すぐ後ろにあった柱にもたれかかる。
静かに深く溜め息を吐いた。
「何よ。勝手に信用して勝手に悩んで……。」
堪らずしゃがみこんだ。
「初めてだったから……。初めてあんな風に接してくれたから……。」
風が余計に冷たく感じられる。