しゃがみこんでじっとしていたリアを、そっと温かいものが包み込んだ。
「…ゼイル?」
肩に黒い執事服がかかっている。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「う…ん……。」
「部屋に戻りましょう。お体に障ります。」
「うん、分かった。」
ふわふわのベッドに倒れ込むように仰向けになる。
リアは一瞬の淡い夢に引き込まれた自分が嫌だった。
「バッカみたい……!」
腕で目を覆う。
「お嬢様、そういえばレクス様からこれを。」
「捨てといて。」
「しかし…お嬢様に似合いそうで可愛らしいですよ、これ。」
「いらない。捨てといて。」
「…はい……。」
扉が閉まる音がする。
リアはそれからしばらくそのままの体勢でいた。
だんだん意識が遠退いていく。
ゼイルが帰ってくると、主人は規則的な呼吸を繰り返すばかりだった。
「こんな格好でお休みになられたら風邪を召されますね。」
一歩主人に近寄った。
起こさないように着替えさせ、寝かせる。
温かい布団をかけ、明かりを消した。
「お休みなさいませ、お嬢様。」
静かに言って一礼する。
そして静かに扉を閉め、途中止めの仕事に戻るのだった。