こんな形で君のこの一瞬を見るなんて
どうしようもなく胸が痛くて
痛みを堪えるのがやっとだよ
純白のドレス
君が大好きだった白い薔薇を髪に付けて
君らしい口紅の色
白い肌
僕が大好きだったその笑顔で僕の目の前に立つ
ヒールのせいか僕と同じ目線に君の顔があってドキドキした
やっぱり綺麗だ
今日の君も
『来てくれてありがとう』
そう言って少しぎこちなく笑う君に
『おめでとう』と言ったけど僕の心は傷付いて言葉に対する感情を失った
君の顔をちゃんと見れなくて駄目だと思っていた涙が溢れて来た
君の前では泣いたことなんてなかったのに
その時君の香りがすぐ側にあった
君に言葉はなかったけど分かる
僕がもう少し早く君を迎えに行けば良かった
君が望んでいたのなら
君の腕を迷わず掴めば良かった
切なくて思わず君を抱き締めたことがあった
君は僕に身を委ねなかった
そんな君が今僕を抱き締めてくれている
恋人ではない
きっと友達として
だから動きかけた手を止めた
君をまた抱き締めたら崩れてしまう
心臓が激しく波を打つ
『どうか幸せに』
嘘だよ
だってやっぱり嫌なんだ
前よりも少しふっくらした君の腕
僕に悩みを相談してくれていた時はあんなに痩せていたのに
安心するよりも嫉妬した
僕には出来なかったこと
幸せそうに笑う君
僕はこんなに笑わせることは出来なかった
『ありがとう』
君が僕から腕を解き哀しそうに笑う
こんなに素晴らしい言葉が虚しく胸に突き刺さる
背を向けて違う人の元へ行く君が遠い人となる
思い描いた君との未来はもうない
僕の勝手な妄想
現実に出来なかった僕は無力だった
君の幸せを心から願えない僕は大人げなく悲しい奴だ
隣にいるのが僕だったら
君にどんな未来を見せてあげられただろう
『幸せにするよ』
そう君に言ってあげられていたら
君は隣でどんな笑顔を見せてくれただろう
君を思い切り抱き締めて
君が心を許して僕の背中に腕を回してくれたら
僕等はどんな愛の形を築けていただろう
この涙が悲しみの涙ではなく
幸せの涙だったら
君はあんな顔をして笑いかけなかっただろう
僕の悲しみを見透かして君はきっとまた心を痛めていたんだろう
君への想いを吹っ切る為に此処へ来たはずだったのに
君の優しさに触れた僕は未練だらけだよ
綺麗な君を見てしまったらやっぱり君を奪いたくなるんだ
青過ぎる空を見上げすべての気持ちを吐き出すように溜め息をついたら
また堪らなく寂しくなって
また涙が頬を伝う