「叔母様から何も聞かされてないんだ。」
レクスは独り言のような小さな声で言った。
リアの執事であるゼイルには聞こえてなかったようだが、リアにはしっかりと聞こえた。
(そりゃあ聞こえるわよね…こんだけ近いんだから…!)
レクスの顔はリアのすぐ上にあった。
手は腰にしっかりと回されており身動きができない。
後ろから抱き締められているような体勢だ。
少しでも離れようともがくと反対に力を強められる。
この体勢に、いつもはあまり感情を表に出さないゼイルでさえ顔を引きつらせた。
「いい加減離れてくれないかしら?動けないんだけど……。」
「動かなくていいよ。」
さっきからこの会話しかしていないような、そんな感覚に襲われる。
一発肘で殴ってやろうかとも思ったが、リズの目が気になるので止めておいた。
(リズさんも止めてくれればいいのに……。)
そう思ってそちらに目をやると、彼女は無関心そうに見つめ返してくるだけだった。
(あ、彼女もこいつ、レクスの味方だったんだ……。)
リアは直感的に感じたことに気が遠くなるのだった。