悪魔の天使 (22)

暁 沙那 2011-08-10投稿
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「リア?」
「え……?」
「どうかした?」

レクスの呼びかけに我に帰る。

「何でもないよ?」

リアはそう答えてから俯いた。

知らず知らずのうちに顔をしかめて、物思いに耽っていたリアは、気付かなかった。
レクスがこちらを覗き込んでいることに。

「な…何?」
「もしかして、なんだけど…」

――見たの?

声ではなかったけど、口の動きで分かった。

そして愉悦の混じったこえで聞いてきた。

「見たの?」
「見たって…何を?」
「誰かを」
「誰かって、誰?」

さあ、と吐息だけで答えられる。

レクスの口元には不敵な笑みが宿っていた。
瞳には優しさなんて欠片もない。

その色の暗さにリアは思わず身が竦んだ。

それを認めてレクスはくすっと笑う。

そしてリアの頬を優しく撫でた。

「――っ……や……。」

悲鳴にならない悲鳴が出る。

それを聞いたレクスは楽しむかのような声で言った。

「何?まだ日も暮れきってないっていうのに誘ってんの?」
「違っ…!」

反論と同時に出た手はレクスに易々ととられる。

「っ!?」

彼の手の強さに顔をしかめる。

生理的に涙が出た。

レクスはそれを感情の読めない目で見るだけだった。



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