「何で泣くの?」
「…泣いて…んかっ……ない…痛っ…!」
途切れ途切れ言った言葉はリア本人でも分かってなかった。
ただ押さえつけられている手首が痛くて、自由な足だけでもがく。
「離し…!」
言い終わらないうちに体勢を変えられた。
手は掴まれたままだったが。
リアは手が痛くないことに少なからず安堵した。
だがそれも束の間の安堵だった。
後ろに回された手の方からちゃり、と聞こえる。
何かと思い後ろを振り向こうとすると、
「振り向いたらダメだよ?分かった?」
手に軽く口づけられた。
彼の顔が離れる気配がする。
リアは溜まっていた息を吐き出した。
そのすぐ後に体が重くなるのを感じて、レクスの方を向いた。
「…何を!?」
「ん?ああ、まだ動けるんだ。」
レクスがそう言うと手首に冷たいものが当たった。
それと同時に体からどっと力が抜けた感じがする。
座っているのも辛くてレクスに体を預けた。
羞恥に身体が熱くなるのを感じる。
疲労感に身体が重くなるのを感じる。
何も分からなくなって……。
意識が飛んだ。
真っ暗闇に包まれて。
誰かが優しく髪を撫でている気配がする。
手は温かくて大きくて。
安心感に包まれて
全てを委ねた。