それからの記憶はない。 覚えてるのは姫歌ちゃんが隼人の腕に抱きついてそれを振り払わない隼人そこまでだった…。
あの日以来、私は隼人のお見舞いに行っていない…
留季 「ちょっと桜!聞いてんの!!」
気づいたときは私は留季と会話していたらしい。
桜 「え…あ…なんだっけ…ごめんもう一回言って」
留季 「だーかーらー隼人くんもうすぐ来るよって言ってんの!!」
桜 「もうすぐって…隼人は入院中じゃ…」
留季 「退院したんだよ!最近桜は隼人くんのお見舞いに来てなかったでしょ?」
桜 「うん…」
留季 「本当は明日から登校なのに無理矢理今日から登校することにしたらしいよ」
桜 「なんで?」
留季 「アンタねぇ〜桜のこと心配してるからに決まってるからでしょ!」
桜 「ふぅ〜ん。なんで?」
留季 「なんで?じゃないでしょ!! 隼人くんが桜を心配する理由は言われなくてもわかってるでしょ!」
わかんないよ…そんなの…
隼人が私のこと心配してる?
そんなわけないでしょ?
留季 「桜?」
隼人 「桜!!」
二人の声が重なる。
桜 「隼人…」
隼人 「どこかケガしたのか?」
桜 「え…」
隼人 「お前全然俺の病室来なくなったからケガしたのかって心配した」
桜 「隼…人…」
隼人 「それと今日の放課後あいてるか?」
桜 「うん?」
隼人 「今日公開する映画あんだよ。それを桜と見たくってさ」
嬉しかった。
隼人から誘ってきたのが。
それがすごく嬉しかった。
放課後。
私達は映画館まで手を繋いで行くことにした。
隼人 「この映画メッチャ楽しみなんだよな」
隼人すっごく楽しそうだな。
桜 「上映中に眠っちゃだめだよ」
隼人 「絶対に寝ねぇーよ」すると誰かの携帯が鳴った。
曲はロック系で私の着信音じゃなかった。
隼人 「もしもし…あぁ……はぁ?……わかった…」その着信音は隼人のだった。
隼人は携帯をとじた。
桜 「誰?」
隼人 「姫歌」
ドク…
その名前は聞きたくない…。
桜 「用件…は?」
隼人 「寂しいから病室に来てくれだって」
桜 「…行くの?」
隼人 「あぁ。映画はまた今度な」
そう言って隼人は歩き出した。
あんなに楽しみにしてた映画より姫歌ちゃんを選んだ…。
そんなに姫歌ちゃんが大事?
そんなに私よりあの子が大切…?