あ〜あ、桜ノ牧がいるから紫音に会えるかもしれないのに、桜ノ牧がいるから紫音に会えない…。
十一月。
結局、紫音の誕生日を祝えないまま十月は過ぎた。
「直紀君〜。」
明秀先輩だ。
「将悟の妹が大好きなんだっけ?」
「そうっすよ。」
いきなりどうしたんだろう、先輩。
「将悟を説得しないと会えないのか…。」
「もう、7ヶ月たってますよ。」
「無理よ〜将悟は俺が一番カッコいいだから。」
「ナルシストかよ…。」
先輩はあはは〜と笑っている。
「ウチね、将悟が好きなんだよ。」
いきなり暴露かよ。
「将悟が部活入ってくんなかったら園芸部、つぶれてたもん。」
先輩は顔を赤くして言った。
「てなわけで、直紀君!ウチも将悟に説得するから、ウチの恋も協力してな!」
そうきたか…。
先輩は俺の手を握ってうるうるした眼で言う。
断れないじゃん…。
「わかった。」
「わーい、直紀君大好きー!!」
先輩は俺に抱きつく。
いや、桜ノ牧に言えよ。
「ちょっと待ったー!!」
桜ノ牧が教室のドアを開けて勢いよく入ってきた。
「あ、桜ノ牧…。」
「いつの間に恋愛関係が!?」
勘違いされちゃったし。