「え……?…契約?」
契約。
それは妖魔とそれを使う者、主との力の繋がり。
主は欲しいものを力によって手に入れる。
妖魔は主の血と力を手に入れる。
主は妖魔を契約によって縛る。
妖魔は契約によって主に縛られる。
契約の強さによっては逃れられるが、場合によっては……。
「逃げられない。」
トクン、と嫌な風に胸が脈打った。
「大丈夫。一番強い契約は出来ないから。」
「次に強いのなら、契約する妖魔の同意なしでも…」
「できるね?だからだよ?その契約したの。」
今までのと何一つ変わらない笑顔で話すレクス。
(何かむかつく……。)
少しいらっとしたが何とか押さえ込む。
「叔母様の差し金かなんかですか?」
「半分正解。」
「半分?」
リアがそう問うと急にレクスから今までの笑顔が消えた。
変わりに怪しげな笑みが宿った。
「これ以上は聞かないでね?」
「命令?」
「そう。命令。」
髪を一房掬い上げ口づけを落とす。
上目遣いに小さく言った。
「もう逆らえないし、逃げられない。」
そう言われた途端、胸が熱くなった。
怒りだ。
「――っによ!」
目の奥が熱い。
「私はあんたの奴隷になってあげるつもりなんてないんだから!!
だいたい何よ!?
勝手に契約なんてして、私のことは無視!?
やっぱあんたも他の奴らと一緒ね!
最っ低!」
つい今までの契約者のことを思い出した。
最初はニコニコして優しくしてくれた。
でもちょっと抵抗するとすぐに手のひらを返した。
暴力を振るうたり、嫌がることを無理矢理しようとしたり。
また彼もそうするのか。
否応なしに手が震える。
怒りと恐怖。
どうしようもなくてレクスを睨み上げた。
と、いきなり体が前に寄せられて……。
抱きしめられるかたちになる。
「ごめん……。」
「何を戯れ言を……!」
「恨むなら恨んでいいよ?君の許可なく勝手に契約して。」
リアからはレクスの顔は見えなかった。
でも本心から謝ってくれた気がして。
嬉しい反面、心には闇があった。
(やっぱりまだ駄目だ。私はもっと……。)
彼に体を預け、そっと目を伏せた。