小さなショートケーキ
電気を消して灯る一本のろうそく
薄暗い中に浮かぶあなたの顔
小さく息を吸い込み
静かに吹き消す
『誕生日おめでとう』
大好きなあなたの声
少し恥ずかしくなってごまかして笑う
『ろうそく、消す前に願い事した?』
あなたが微笑む
『忘れてた』
初めてあなたと過ごす誕生日
緊張と喜びで願い事なんて忘れた
そんな私に思い切りあなたは笑う
目を細めて優しく笑う
私はそれだけで十分
願い事
叶うなら私は願う
あなたと来年もこうしていられます様に
あなたがまた私に『おめでとう』と言ってくれます様に
あなたがまた大好きな笑顔を見せてくれます様に
欲張りかな
こんなに願う私は
甘いものが苦手なあなた
美味しそうにケーキを食べる私を見て苦笑いする
『食べる?』
一切れ差し出すケーキに苦笑いをして首を振る
そんな顔も好きよ
最後の一口
勿体なくて手が止まる
『また買ってやるよ』
あなたはそう言う
『来年も同じの食べたい』
何だか泣きそうになる
『いいよ』
あなたが笑う
願い事一つ叶うなら
どうかずっとあなたといられます様に
最後の一口を飲み込んであなたに一つキスをした
『甘いな』
あなたが眉をひそめて言った
そんなあなたにまた恋をした
あなたがいてくれるなら
私は幾つ歳を取っても構わない