「…そんな勝手に決めつけたような言い方してるんじゃねぇ!俺は普通の高校生だったのに…そうだ、死にさえしなければ普通に大学行って就職して…」
『君の死が、アダムのせいだとしたら?』
「……は?」
一瞬の沈黙が流れる。
『君、脳腫瘍で死んだでしょ?』
「…!!」
『アレはね、ただの腫瘍じゃなくてアダムの呪いなんだよ。ルコフィエルの魂が転生してもなるべく早く死ぬようにって…』
「じゃあ俺はルコフィエルの生まれ変わりだから、そのアダムって奴のせいで死んだっていうのか?」
『そうそう!アダムって嫌な奴だよね〜!どう?倒したくなってきたでしょ!!』
「黙れ!!!!」
今までに無い大声を出したコウに、サリと白蛇は初めて驚いたような様子を見せた。
「そうだとしても…俺はこんな腐った世界を救うつもりなんてねぇよ!!救いたきゃ自分で救いやがれ!」
サリの顔が悲しそうに曇った。
『そう思ってたならごめんね…こっちで何とかするよ…』
サリは何も言わぬままコウを連れて地球へと下降した。まるで地獄へ落ちるかのような感覚だった。
気付くとコウとサリは見慣れた街中に立っていた。
『49日間は魂は現世に居続けるよ。その間に見たいものを見ておくといい。……じゃあね。』
少しぶっきらぼうに言って、サリは煙のように姿を消した。
コウはしばらく呆然と立ち尽くしていた。
人々が自分の中をすり抜けて行く。走り去る車の音、鳴り響く携帯の着信音…全てが体の中をすり抜けていく。
自分の事ばかりで他には見向きもしない人々。
「あいつマジきもい!」
「うざいよね〜」
「大嫌い」
「死ね」
耳に入ってくる“声”という雑音。他人の悪口、自己の欲求。コウはあらゆるものに嫌悪感を覚えた。
こんな世界、滅べばいい。
コウは無気力に歩いた。歩いた、といっても、踏みしめるアスファルトの感触は無く、空気を蹴っている、といったような感じだ。
コウはなんとなく自分の家へと向かった。