昔からそうだった。
誰にも甘えれなくて、寂しかった。
『あと一年待ってて。絶対迎えに行くから。』
彼は優しい声音で、小さな子供にそうするように撫でた。
『覚悟決めといてね?』
不敵な笑みで
『君は俺のもの。だから他の男のとこに行っちゃダメだよ?』
あれからしばらくたった。
「あの人どうしてるのかしら。」
窓から外を見つめ呟く。
「レクス様のことが心配ですか?」
途端弾かれたように後ろを振り返る。
「し…心配!?はっ!そうね、心配かって言われたら心配かもね。でも、それはこれのせいだから!」
早口に言って、首元に掛けてあるネックレスを指差す。
「契約解いてくんないと困るからよ!」
「はあ。」
少し息を切らして力説する。
気恥ずかしくなって思わず立ち上がった。
「どちらへ?」
「ちょっと書庫から本でも借りてくるだけよ!」
少し乱暴にドアを閉めた。
書庫へ着くと本の匂いがした。
たくさんの魔法書が置いてある。
その中の一冊を手に取った。
中でも古そうな一冊に手を触れた。
周りを目だけを動かして確認する。
(誰もいない。)
確認し終えると軽く背表紙を叩いた。
移転の魔法。
一瞬のうちに本が消えた。
それを認めると、何事もなかったかのようにまた本を物色するのだった。