16.
(この男は――)
――「お父さんとお母さん、死んじゃったよ?」
6年前に現れた男の顔と、クロガネの顔が一致した瞬間だった。
すると、体が一瞬にして熱くなるのを感じた。
今、強い憎しみがケイゴを支配していた。
*
クロガネがモニターに現れてから、情報局はすぐさま動き出した。
ハイトに事の全てを話し、他のリイバーたちに協力を依頼する。
そしてそれが完了するまでに1時間とかかずに、ミッションが言い渡された。
「K843地点で他のリイバー2人と合流して、クロガネのもとに向かってくれ。僕たちは他に応援を呼んで後から向かう。出発は10分後だ」
「分かりました」
ソウからミッションを聞いたレイは、自室に戻るため情報局から出ようと出口へ向かった。
扉が開き情報局から出ると、そのすぐ横にケイゴがしゃがみ込んでいる姿があった。
頭を下にさげ、その前で右手に拳を作りそれを左手で包んでいる。
よく見ると拳は小刻みに震えていて、まるで怒りを表しているかのようだった。
「……ケイゴ」
そんなケイゴをレイが静かに呼ぶと、ケイゴはゆっくりと頭を上げてレイを見た。
そのケイゴの目つきに、レイの呼吸が一瞬止まった。
殺意に満ちた、鋭い目つき。
そんな目を見たのは初めてだった。
しかしその表情は一変して、レイがよく知っているいつもの表情へと変わった。
「……レイか。何?」
「せ、先生からミッションが……出発、10分後って」
レイは動揺を悟られまいといつも通りに振る舞おうとしたが、声は震え言葉は途切れ途切れで、明らかに動揺していることが見て取れる。
「ああ。分かった」
ケイゴはそれだけ言うと、ゆっくり立ち上がって自室の方へ歩き出した。
そんなケイゴの後ろ姿を見ながら、レイは短く息を吐き出して肩の力を下ろした。
そしてレイは自室に戻るため、ケイゴとは逆の方へ歩き出した。