『生きる』ということ。<3>

黒魔法 天使 2011-08-19投稿
閲覧数[409] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「羽琉ちゃんは、何で自殺なんてしようとしてたの…?」

「……別に…。あんたは何で私をここに連れて来たのよ…。」

「だって…こんなキレイな景色を見ないで死んじゃうなんて、勿体ないでしょ?」


「………あんた、いつもこの時間に、ここに居んの?」

「まあ…大体、ね。」

「こんな時間に家出たら、親、心配するんじゃない?」

「ん〜…僕、親と会ってないんだ…。」

「え……?」

「あ…家出とかじゃないんだけど…。僕、病気でね、ずっと入院してるんだ…」

(だからパジャマなのか…。)

「本当は…外出禁止なんだけど、この時間なら外出ても大丈夫だから…。お母さんも、お父さんも、仕事で海外に行ってるから、会えないしね…。」

「…寂しかった…?」

「……うん…でも、今日は羽琉ちゃんに会えたから、楽しかったよ!」

聖は、ニコッと笑った。

「さぁて…そろそろ帰らないと看護師さんが見回りに来ちゃう。羽琉ちゃんも、早く家に帰らないと親が心配するよ。」

聖は立ち上がる。

羽琉は起き上がり、膝を抱えて顔を埋め、
「嫌……。」
と震える声で言った。

「家になんか…帰りたくない…。」

「…どうして…?」

「家に帰ったって、どうせ私は一人…。」

「親は…?」

「そんなの、2年前に出てった…。」

「え!?」

「私には、4歳と6歳、歳が離れてる妹がいるの。ウチの親は離婚を決めてたんだ。そしたら、誰がどっちに行くか親が勝手に決めちゃって…。まあ、一番下の妹は、父さんじゃ面倒見れないから、母さんが引き取って、二番目の妹は父さんが引き取ったんだけど、私はどっちにも引き取られなくて、その結果、私を家に置いて二人とも出てった。 まだ12歳だった私を置いて…。」

「…………」

「ま、お金も置いてってくれたから、生きていけるけど…。」


−ポロッ−

その時、羽琉の頬を、一筋の涙がつたった。

−ポロポロッ−

次々と流れていく…。

「…ごめ…ん……。」

「もう帰るね…。」

羽琉は立ち上がる。

「明日も…ここで…」
聖は弱々しく言った。

「…うん…。今日はありがとね。」
羽琉は笑って去って行った。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「黒魔法 天使」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ