「羽琉ちゃんは、何で自殺なんてしようとしてたの…?」
「……別に…。あんたは何で私をここに連れて来たのよ…。」
「だって…こんなキレイな景色を見ないで死んじゃうなんて、勿体ないでしょ?」
「………あんた、いつもこの時間に、ここに居んの?」
「まあ…大体、ね。」
「こんな時間に家出たら、親、心配するんじゃない?」
「ん〜…僕、親と会ってないんだ…。」
「え……?」
「あ…家出とかじゃないんだけど…。僕、病気でね、ずっと入院してるんだ…」
(だからパジャマなのか…。)
「本当は…外出禁止なんだけど、この時間なら外出ても大丈夫だから…。お母さんも、お父さんも、仕事で海外に行ってるから、会えないしね…。」
「…寂しかった…?」
「……うん…でも、今日は羽琉ちゃんに会えたから、楽しかったよ!」
聖は、ニコッと笑った。
「さぁて…そろそろ帰らないと看護師さんが見回りに来ちゃう。羽琉ちゃんも、早く家に帰らないと親が心配するよ。」
聖は立ち上がる。
羽琉は起き上がり、膝を抱えて顔を埋め、
「嫌……。」
と震える声で言った。
「家になんか…帰りたくない…。」
「…どうして…?」
「家に帰ったって、どうせ私は一人…。」
「親は…?」
「そんなの、2年前に出てった…。」
「え!?」
「私には、4歳と6歳、歳が離れてる妹がいるの。ウチの親は離婚を決めてたんだ。そしたら、誰がどっちに行くか親が勝手に決めちゃって…。まあ、一番下の妹は、父さんじゃ面倒見れないから、母さんが引き取って、二番目の妹は父さんが引き取ったんだけど、私はどっちにも引き取られなくて、その結果、私を家に置いて二人とも出てった。 まだ12歳だった私を置いて…。」
「…………」
「ま、お金も置いてってくれたから、生きていけるけど…。」
−ポロッ−
その時、羽琉の頬を、一筋の涙がつたった。
−ポロポロッ−
次々と流れていく…。
「…ごめ…ん……。」
「もう帰るね…。」
羽琉は立ち上がる。
「明日も…ここで…」
聖は弱々しく言った。
「…うん…。今日はありがとね。」
羽琉は笑って去って行った。