「人のものに何してんの?」
声はどこか呆れたような色を含んでいた。
「誰だ?」
リアの手を掴んでいる男が低い声で訊ねた。
捕まれている手がすごく痛い。
生理的な涙が零れた。
「俺はレクス…まあいいや。うん。その子の…リアの主人だよ?」
それを聞いた男の手により力が入った。
「――っ!!」
痛みで感覚が消えそうだ。
リアは唇を噛み、痛みを通り越そうとする。
涙が絶え間なく流れた。
それを見たレクスの目に険が宿った。
「リア、明らかに痛がってるよね?放してあげなよ。」
「そんなことわしの知ったことではないわ!これは耐えればよい。どうせまた、これ以上の屈辱を味わうのじゃ。今も次も同じ。」
「そうはならないよ。これからはずっと俺が守ってあげるから、その子を。」
男がチッと舌打ちしたのがリアに聞こえた。
それと同時に警報が鳴り響く。
「さっさと出ていかねば、これがどうなっても知らんぞ。」
手が首に回された。
「――っく…!……あ……。」
首を絞めている手に体重をかけられて、息が詰まった。
リアは自由になった手で必死に押し返そうとする。
しかし、手に力が入らない。
(そろそろ…意識が…飛びそう……。)
目の前が霞む。
もう涙でぼやけているのか、意識が飛びかけているのかも分からない。
ただただ身体から力が消えるのが分かった。