(A棟の202号室…)
「ここだ…」
「……」
そろりと中を覗いてみる。
「っ!!」
そこにはベットに寝たきりになっている聖がいた。
「聖!!」
羽琉は聖に駆け寄る。
「聖!聖ってばっ!!」
聖は何度呼ばれても、反応しなかった。
「あら…あなたは…?」
一人の看護師さんが羽琉に声を掛けた。
「聖は…聖は、どうしちゃったんですか!?」
羽琉は看護師さんに聞く。
「えっと…聖君のお友達かな…?」
羽琉は大きく頷く。
「ごめんね…。聖君、まだ意識が戻ってないの…。」
「え…!?」
「一昨日、急に容態が悪くなってね…ずっと寝たきりなの…。」
(一昨日って…聖が丘に来なかった日だ…)
「嘘……そんな…!」
「……また…明日も来るね…」
羽琉は病室を出た。
(私のせいだ……私が…私がもっとしっかりしてれば、聖は…)
-次の日-
「聖…来たよ…」
羽琉は聖に話し掛ける。
「聖…ごめんね…」
-ポロッ-
涙が静かにこぼれ落ちた。
「聖ぃ……」
「羽…琉…ちゃん…?」
「聖…!? 聖!!よかった…意識、戻ったんだね!! あ…看護師さん呼ばなきゃ…!」
羽琉が看護師を呼ぼうとした時、聖が羽琉の服の袖口を掴んだ。
「羽琉ちゃん…泣いてる…?」
「あ…ううん。何でもないよ…」
羽琉は慌てて涙を拭く。
「どうしたの…?悲しい事でもあったの…?」
聖が心配そうに聞く。
「あったよ…聖に会えなかった…!すっごく…すっごく寂しかったんだよ!?すっごく心配したんだよ…!?」
「ごめんね…。」
「え…なんで聖が謝んの!? 悪いのは私の方!」
「え…!?」
「私がしっかりしてれば…」
「違うよ…!羽琉ちゃんのせいじゃないよ。」
「…ねぇ…よくなったら、また丘で一緒に話そう?」
「うんっ!」
「ありがとう…」
羽琉の目から、優しい涙が流れていった。