戒は目を覚ますと辺りを見渡した。
戒が寝ていたのは四畳半の真っ白な部屋だった。
部屋に窓はなく、あるのは戒の寝ていたベッドと戒の腕に点滴、そしてベッドのそばにある葵が座っている椅子だけだった。
葵のスースーという寝息が部屋に響き、それが戒の心を和ませた。
部屋に時計がないためどれだけ時間がたったかわからないが、葵はこんなになるまでそばで看ていてくれていたのだ。
葵の寝顔を見ながら戒は思った。
−虐めのとき、守っているつもりで自己満足して、守るどころか葵をよけい傷つけていた。
そんなことにも気付かなかった愚かな自分。
それに気付かされたとき自分も傷ついたふりして葵を避けた。
それを全部葵の所為にして色んなことから逃げた卑怯な自分。
そんな俺を葵は守ってくれた。
理由はわからない。ひょっと何らかの事情があって嫌々俺を守ってくれたのかも知れない。
だけどそれでも…。−
戒は寝ている葵の頭に優しく手を置いた。
「ありがとう。葵。」
戒はそう言って優しく微笑んだ。
しかし、冷静になって考えてみると今の状況にいささか疑問が浮かぶ。
あれから強盗はどうなったのだろうか。
妹の明は、両親は無事なのだろうか。
第一ここはどこでどうして自分はこんなとこにいるのだろうか。
まあ、こんなこと自分一人で考えてもしょうがない。
葵に聞こうと戒は考えたが、寝ている葵を起こして聞くのは申し訳ない。
戒は葵が起きるまで待つことにした。
しばらくして外からピッという電子音が鳴る音がした。
ガチャンと音を立て、部屋のロックが解除される。
葵もその音で目を覚まし、相変わらず無表情な顔でドアのほうをみた。
ドアが開くとそこには20代半ばぐらいの女性が立っていた。
「やっと起きたわね。戒くん。」