久しぶりに夢を見た。
『確か、もう一年たったのよね。』
金が舞う。
『私たちが出会ったのは奇蹟なの。』
少女らしい愛らしい笑みだ。
『愛してる。』
ほんのり頬を色付かせながらも、堂々と言う。
『愛してるわ。』
そんな彼女から不意に笑みが消えた。
『あなただけはどこにも行かないでね?』
――私を捨てないで。
いつの間に眠ってしまったのだろう。
リアはゆっくりと起き上がる。
金の髪が肩から滑り落ちて、青い瞳を隠した。
リアはそれにも構わず、先程の夢の意味を考える。
と、ベッドのはしにある何かに当たった感じかした。
素早く手元を見下ろす。
途端、勢いよく手を引いた。
触れていたのはレクスだったのだ。
寝ているのか規則的な呼吸が聞こえてくる。
リアは息を呑んで、その顔を見た。
黒髪が少し乱れている。
髪と同じ色をした瞳は閉じられていて見えない。
シャツは上の二つが外されていて、肌が少し露になっている。
隙間から覗く肌に気付いたリアの顔が、一気に熱を持った。
バッと身を勢いよく引いて、口元を押さえる。
否応なしに顔が赤くなるのを感じた。
(どうしよう……。落ち着かなきゃ……。落ち着け。落ち着け、私!)
どうにかしようと必死になって考えるが、上手く頭が回らない。
そうやって小さくパニックになっているところに
「んー……。」
小さく聞こえた声に驚いた。
口を押さえたままでいなければ、声が出ていたに違いない。
しばらくそのままで固まっていたが、あの呼吸が聞こえてきてほっとする。
リアは口から手を離し、そっとレクスの髪に伸ばした。
触った黒は思ったよりさらさらしている。
しばらく撫でていると、レクスの方から低い笑い声が聞こえてきた。
驚いて手を引こうとすると、逆にその手を取られる。
「きゃ!?」
「何で止めるの?」
「それはそっちがいきなり……脅かすから。」
「脅かしてなんかないけど。そっちが先に色々してきたんじゃない。」
「う…ん……。それはそうだけど……。」
レクスは悪戯っぽい笑みを浮かべると、ベッドに上がり、リアの隣に横になった。
そして、また眠りにつくのだった。
(ずっと側にいてくれたんだ。)
リアは先程と同じようにレクスの髪を撫でながら呟いた。
「ありがとう。」
たった一言、優しく。