「で、どうしたの?」
『私…サユに裏切られたの。』
「えっ…サユちゃんに?」
驚くのも無理はない。アキとサユは小さい頃からずっと仲が良かったのだから。
『理由は…カズヒロが好き。その気持ちがまだあるから、アキとは仲良くできないって。』
「酷いなぁ…サユちゃん。普通、アキちゃん本人に言わないよね…。」
『うん…。あと、バレーの練習の時も、サユが手話で、キャプテンが話してる事を伝えてくれないから、私、指示どおりに出来なくて…。すると皆から、障害者とか…耳が聞こえないからだとか、またいじめられるようになっちゃって…。』
ヒロは優しく頷いている。アキは安心して、
『もう一つ…気にしていることがあって。』と言うと、
「いいよ。」と言ってくれた。
『私、ユウタに告白されて…。』
「ユウタも?何してんだよ…本人目の前に…。」
『カズヒロがいることは分かってる。でも私がろう学校に転校すると聞いたら、自分の気持ちが抑えられなくなったんだって。』
「そっか…。」
『ごめんねバイト中に。でも相談できる相手が、ヒロしかいなかったから…。』
「別に大丈夫だけど…。」
『カズヒロに言われたの。誘拐されたとき。助けるのはこれが最後って。』
「みんな酷いな…。」
ヒロの目頭があつくなる。相当怒っているようだ。
「つらかったら、いつでも来て良いから。」
アキは頷いた。