数日後、いつものようにカズヒロと一緒に歩く。
アキは、迷惑を掛けないように、カズヒロの前では明るく振る舞った。
『ねぇ、サッカーの練習はどう?』
「バッチリだな!調子もいいし。」
するとカズヒロは、
「そっちはどうだ?」と聞いてきた。
『皆気合い入りまくり!私も気合い十分!』
ひとつも、暗い顔を見せなかった。
「おぅ、そうか!」
カズヒロが笑ってくれればいいんだ。アキの心が少し軽くなった。
しばらく歩くと、カズヒロが、
「ユウタのこと…気にしなくて良いから。」
アキはカズヒロを見つめた。
真剣な顔。
「マジで気にすんなよ。」
『うん…分かった』
するとカズヒロが手話を使わずに呟いた。
「ユウタなんかにアキを取られてたまるかよ…。」
『ん?』
「あ、なんでもない…ついに明日だなー、クラスマッチ。」
『あ…そうだね。』
気がつけば、もう明日はクラスマッチ。今日は最後の追い込みになる。
「これが、アキのいい思い出になりますように。」
『ちょっとやめて!』
いちゃいちゃする光景を、サユは鬼の形相で見ていた。
「今日はたっぷりいじめてやるからさ…アキ。」