にゃー、にゃー、にゃー
。
夜の公園に響く野良猫たちの声。
「うるさいの、ほっておいて」
猫の声に紛れて、女性の声がする。
薄く照らされた公園のブランコの上にその女性はいた。女性は両手でブランコの鎖を握りしめながら俯いている。
「うう、ぐすん」
顔を真っ赤にし、女性は俯きながら涙を溢していた。
ちなみに病気やら体の調子が悪いわけではない。
「ぐう、うえぇ・・・グスン・・・あの、バカ!!!」
泣いているのか、怒っているのか。
まあ、両方なのだろうが。
何故こんなことになっているかというと、
「なんで、お姉ちゃん置いてきぼりにしちゃうの!? なんで家出なんかしちゃうのよ、かなぁ〜・・・」
この女性、観城さきは実家を離れて妹と二人暮らしをしている。
しかし、一昨日『溺愛』する妹の観城かなが突然「少し家を開けます」とメールが来たきり、家に帰ってこないのだ。
動機などまるで心当たりがないさきは、とりあえず実家に報告し警察にも届け出を出し、仕事を休んで探したが見つからなかったのだ。
「学校にも連絡は行ってないし、かなの友達もみんな知らないって言うし。突然すぎてわけわかんない!」
長く綺麗な黒髪がグシャグシャにかき乱される。さきはそのまま頭を抱えて黙りこんでしまう。
そのまま5分程時間が過ぎた時、手にある携帯がブルブルと震えた。さきは疲れきった目で液晶を見つめる。
そこには知らない番号が表示されていた。
警察かもしれないと思い、通話ボタンを押して話しかけた。
「もしもし」
『お姉ちゃん?』
さきの表情が明るくなる。
「かな!? アンタ今どこにいるの?」
『あはは、ごめんね』
「ごめんじゃない! 早く帰ってきなさい!!」
『う〜ん、まだムリ』
「無理って。じゃあ迎えに行くから!」
『あ〜、それもムリ』
「なんで!?」
『だってそっちの世界じゃないし』
???
「ちょ、アンタ電波持ちだったっけ?」
『違うし、ひどい〜。まあ心配しないで、そのうち帰るから。じゃね』
一方的に電話は切れてしまう。
しかし、さきの頭から一つの言葉が離れない。
「そっちの世界?」