悪魔の天使 (33)

暁 沙那 2011-09-11投稿
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「何で家に来たの?」

前とほとんど同じ体勢でレクスに聞く。

「ああ、仕事の話しに来たんだけど。」
「仕事?」

リアが振り返ろうとするとそれをレクスが止めた。

「ようやく準備が整ったから、その報告にね。」
「ふーん。」

レクスには秘密や嘘が多い。
仕事の他に来ている理由がある。
それをあえて隠し通す。

(私には言えないこと。経済的なことか…、もしくは……)

――婚姻系か。

自然と笑みが出た。

男を誘うような、艶のある笑み。

「ねえ、仕事って言ったけど本当?」

身体をゆっくりと預け、絡めた手を滑らす。

少し露になった肌にもう片方の手をやり、目線を手の方にやった。

「教えて欲しいな、あなたのこと。」

目線を滑らすようにゆっくりと上げた。

「あなたは主従関係を全うするの?私はいいけどあなたはいいの?」
「何?誘ってんの?」

声はいつもより抑えられている。
その代わりに耳元で囁くから、吐息がくすぐったい。

「駄目?誘っちゃ悪い?一応でもお互い関係持っちゃってるんだから、ちょっとくらい楽しみましょ?」
初めてだった。
まだ若い男を誘うのは。

本当に襲われたらどうしようかと不安になる。

今までの仕事のように中年相手なら逃げられる。
魔法だって使えばいい。
でも今回はそうはいかない。

リアは不安を閉じ込め、またあの笑みを作った。

それでもレクスは何もして来なかったので、リアは少し警戒を解いた。

油断した。

一瞬だった。

リアが気付いたときには完全に押し倒され、身動きがとれなくなっていた。

突然のことに軽く目を見開く。

「ねえ、レク…」

唇で言葉は塞がれた。

それが離れたかと思うと首筋に当たる。

不安が的中したのかとリアは怖くなった。

せめて手の自由だけても取り戻そうともがく。

「ねえ、ちょっと…!止めっ!」

だんだん下に下がって鎖骨の辺りまできたのを感じた。

「やっ…やだ!止めて!お願いだから!ねえっ!」

目に涙が溜まる。

「誘ったのはそっちだよ?」

いつもの声色ではなかった。
表情のない声。

「やあっ……!ごめん…ごめんなさい!!だから許して!!お願いだからっ!止めて!!」

そう叫ぶように頼むと、手が自由になった。

覆い被さるようにしてあった身体が離れていく。



ドアの閉まる音がやけに遠くに聞こえた。

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