「さてさて、ナユリも帰ってくることだしご飯の準備でもしておきますか」
やっとモニターを一番下に直し終えた彼女、ミズはサイズの大きい上着の袖を捲りあげ椅子から降りる。
彼女はモニタールームから出てすぐ脇にある螺旋の階段を軽快に昇る。
「何にしようかねー。というか何か食材あったっけ?」
と独り言をぼやきながら、二階にある部屋の内の一つに入る。
「あれ? 起きたの」
「あ、うん。おはよ。ご飯できるよ」
部屋には簡易的なキッチンとテーブルがある。そのキッチンの前に一人の少女が立っていた。
「疲れてない?」
「いや、むしろスッキリしてる」
観城かなは笑顔で答える。彼女の前にある鍋からは湯気が立っていた。
「まあね、そりゃあれだけ暴れればスッキリするさ」
「暴れればって。ナユリがいないから私が頑張ったんじゃない」
「開始早々、相手に向かっていっちゃうからヒヤヒヤしたよ。まあ、お陰で私のトラップは使わずに済んだからいいけど」
「早めに終わらせたかったの。と、これで良し」
鍋の火を切って、かなはミズの対面の席に座る。
「ナユリは?」
「もうこっちに向かってる」
ミズはそう言うと上着のポケットから四折りの紙を取り出し広げる。それは何かのトーナメント表だった。
「三回戦突破!」
ペンで線を伸ばしたミズは満足そうな顔をした。
「次の相手はどこになりそう?」
「ガオン辺りのチームだと思うよ」
「うわー、あれか・・・。昨日早めに終わらせて休んどいて正解」
かなはグターと机の上に突っ伏す。ミズはテーブルにあったお菓子類に手を伸ばした。
その時、彼女たちには聞き覚えのある『爆音』が聞こえてきた。それは遠くから徐々にこちらに近付いてきている。ミズはしかめっ面をして耳を塞ぐ。
「・・・うるさ」
「アンタが作ったんでしょ」
グターとしながらかなも耳を塞ぐ。
爆音が自分たちの下までくると、程なくしてその音が止む。
そしてドンドンと階段を上がる音。
「あれ? ナユリ?」
バンっ!! と壊れんばかりの勢いで扉が開く。
?マークが頭に浮かぶ二人の前に、
「どうも、かなちゃん」
観城さきが立っていた。