「それで、これは一体どういう状況なの?」
「・・・」
ミズとナユリは『相対』する二人の様子を見る。二人、さきとかなは木刀を片手に距離を取ったまま動かない。
「しかし、まあビックリだよ。お姉さんの行動力には。妹心配してこっちの世界にきちゃうのもそうだけど、来て早々あれだもんね」
ミズは呆れた風に言うが、その顔は今の状況を楽しんでいる様子だった。
一方、ナユリは額に手をあててため息をつく。
「『怒る』ってこういう『怒る』なのか・・・。私はてっきり口論みたいになるかと」
「かなに木刀投げ渡して、『外に出ましょう』だもんねー。かなも何も言わずについてくし」
「やっぱり止めるべき? なんか来る途中と雰囲気違うけど、さきさん、かなっちのコト大好きみたいだったし」
「んー、もちょっと様子を見ようよ。形はどうあれ『姉妹喧嘩』だし」
ミズはナユリのバイクに腰掛ける。ナユリはまだ納得していない様子だが、渋々状況を見守っていた。
互いに距離を取っていた二人だが、仕掛けたのはさきだった。
動きは単純。距離を詰め、木刀を振りかぶり、振り落とす。かなはそれを横に避ける。
かなが避けたところに横凪ぎの一撃を加える。ゴツン、と鈍い音をさせながら木刀同士がぶつかり合った。
そこから、つばぜり合う形になった二人は視線を交わす。言葉はない。
均衡はすぐに崩れる。さきが体ごと押し出すようにかなを突き飛ばす。かなは後ろにバックステップで距離を稼いだ。
すぐに追撃が入る。
突き。さきの木刀の剣先がかなの首もとに迫る。
決まれば大きい一撃だが、
「っ!!」
体をくの字に折って膝をついたのは攻勢だったさきの方。
「さっき後ろに距離取ったときの『前蹴り』が効いたね。でもよく突きを出すとこまでいったよ。かなり痛かったと思うのに」
「本当に姉妹喧嘩?」
冷静に判断するミズ。ナユリは二人の喧嘩を見て顔をひきつらせていた。
さきは立ち上がり二、三度深呼吸をした。目尻にはうっすら涙がある。
そして構えを変える。今までの正眼の構えから、今度は腰を落として木刀の刀身を左手で持ちながら腰に引く。
居合いの構え。特徴的なのはかなり体を捻って背中を半分以上相手に向けている。