21世紀ともなると私たち悪魔の世界も変わってくる。
徹底された子供悪魔の教育機関に民主主義の社会。
昔はどうであれ、今はほとんど人間の世界と変わりない世界となっている。
ただ一つ違うのは召喚と契約があることである。
私たち悪魔はすべからくルシフェル、ベルゼブブ、マモン、ソロモン72支柱など有名な悪魔の子孫であり、その家系に別れる。
その家系で最も有能な悪魔はその一族の当主に選ばれ、祖先である悪魔の名を引き継ぎ人間の召喚に応えるのである。
私ルシフェルの家は本家の血筋のものが優秀で代々本家のものが当主になっていた。
私の父であるメサイアも本家の血筋に違わぬ優秀さで当主となっている。
しかし、優秀な血筋というものは約束されたものでなく、中には私のような例外も生まれてくる。
そう私はルシフェル本家始まって以来の落ちこぼれである。
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ジリリリリリリッ!!
枕元に置いた目覚ましが起きろ起きろと私を急かしていた。
私はその眠たい目をこすりながら騒ぐ目覚まし時計を止める。
まだ少し寝ていたいが今日はそういうわけにはいかない。
私は寝間着からルシフェル本家の正装であるドレスに袖を通した。
コンコン。
廊下から私の部屋をノックする音がする。
「イリスお嬢様。朝食をお持ちいたしました。」
「ありがとう。じいや。入っていいわよ。」
ガチャっとドアが開く音とともに執事であるじいやが朝食を持って入ってきた。
私は軽くじいやお礼を言って朝食をとりはじめた。
「お嬢様。さきほど分家のものから連絡がありました。あと一時間ほどでこちらにいらっしゃるそうです。」
「そう。わかったわ。」
私は少し憂鬱な気持ちになりながらそう応えた。
「あいつらめ。旦那様がいらっしゃらないことをいいことにお嬢様にいつも酷いことを。負けてはなりませんぞ、お嬢様。じいやはいつもお嬢様の見方です。」
当主である父がいなくなって5年。
ルシフェル一族はそろそろ次の当主を決めなければならない。
最近は週に一度の割合で当主を決める親族会議を行っている。
当然一族のものたちは落ちこぼれである私が当主の座を継ぐことを快く思わず、他の当主候補を立ててそちらを次の当主にするつもりである。
私の味方をしてくれるのは回りの世話をしてくれる使用人たちだけである。
「ありがとう、じいや。その言葉だけでも心強いわ。」