酒場の中は驚く程静かだった。マスターも娘もモーズの手下も他の客達も・・ただ黙って椅子や床に座っていた。いきなり娘は立ち上がり扉に向かって歩き出した。
「お嬢ちゃん??」
「・・・」
娘は黙って扉に触れようとした。
ガタッ!!ガラン・・
「!!??」
扉の向こうから板が落ちる音がした。ゆっくりと扉が開きレオンは娘を見て首を傾げた。
「俺は出るなと言わなかったか??」
「まだ出てない」
娘はレオンを睨らんだがレオンと目が合うとすぐに目をそらした。
「・・まあいい。マスター勘定だ」
「あっ!!ああ」
レオンはゆっくりとカウンターに向かいポケットからお金を出しながら歩き出した。我に返ったモーズの手下達は急いで店の外へ走って出て行った。レオンはカウンターにお金を置き扉へと向かい、娘の前で立ち止まりしゃがんだ。
「お前はこれで元いた場所にでも帰りな」
娘の手にお金を握らせてレオンは店の外へと出て行き、町の闇へと姿を消した。
「モーズ船長!!」
店の外では手下達が叫んでいた。マスターと娘が急いで店の外に出ると、モーズは店の前で倒れていた。服の背中には「すぐに医者に連れていけ」と書かれていた。
「ぐっ!!・・あのガキ・・舐めやがって」
モーズの体は血だらけで、よく見ると所々が剣か何かで切られていた。モーズの手下達は急いでモーズを船へと連れていった。
「ねぇ、マスターさん」
「ん!??何だい」
「あの人どこに行ったの??」
「さぁね。ただ分かるのは海賊だ。いずれ海へ出るさ」
「!!マスターさん港は??」
マスターが港の方向を指差すと、娘は「カウ」で唯一船をとめられる港へと走って行った。
「はぁ・・はぁ・・」
港には何十隻の船があり、額をつたう汗を拭い娘は辺りを見渡した。
「??・・あれって??」
娘は走ってある船の前に行き立ち止まった。小さな小さな小舟に帆がついているだけだが、畳まれた帆を広げると赤のクロスが描かれていた。
「これは・・レッド・クロス??」