それは独特の文化を有する、極東のヤマト皇国であった。
ヤマトがなぜイリスにとって障壁なのか、それにはイリスの戦略目標を理解する必要がある。
イリス神は、人智を超える能力を持つエイド人を、地球上に置きながら、あえて悲劇的分散の憂き目に合わせ、多民族間の中に浸透させ、各地で迫害を受けるような環境を整えさせた。
「エイドの議定書」なる文書の流布や、エイドの民族的行動様式は、世界中がエイドを憎むように、また、エイドはその迫害の歴史から、他の民族を憎み蔑むように、常に互いの憎しみが存続するシステムを組み込んだ。
常に紛争を起こし、エイドを軸にして、民族同士を争わせる相殺作戦と、エイドの活動資金捻出のためのマーケット創出が理由である。
またエイド指導下にJU連邦を建国させ、戦闘国家としてJU連邦国民を、最強の軍隊として鍛える続ける意味もあった。
これこそが、JU連邦が唯一存続し続ける条件たるイリスとの盟約であった。
最終目標までは、生かしておいてやる。ただし、途中盟約に反したならば、JUの国家、全国民もろとも、生きる途は絶たれるものと心得よ、と。
JU歴代大統領は、代々、この誓約に従ってきた。