悪魔の天使 (36)

暁 沙那 2011-09-20投稿
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「おはよ。」
「おはよ、リア。」

何気ない挨拶で始まったある朝のことだった。

事件が起きたのは。


「レクス様!」

凛とした声が響く。
その声の主は、真っ直ぐにレクスに走って行って……。

一瞬リアを見た。
冷たい目で。

「エリー様、おはようございます。」

レクスはいつかの嘘の笑顔でエリーに挨拶をした。

優しく、この世の闇の世界など知らないかのような。

直感した。

(ああ、この人は違うんだ、私とは。)

会話は耳に入らない。

楽しげだ。



世界が遠くに感じる。



「ごめんなさい、私、邪魔ね。」

たったそれだけを言ってリアは踵を返した。

「何よ。あの人。レクス様に対して失礼ね。」

エリーの口元に笑みが浮かべられていたのを、レクスは知らなかった。





『ルカ!』
『いやっ!来ないで!!』

あの夢。

『来ないで、来ないで!来ないで!!』

彼女の声はクレッシェンドしながらも震えていた。
それは怒りからくるものなのか恐怖なのか。

『お願い、来ないで……来ないで!!』

今までの夢とは少し違う
激しい、荒々しい感情。

(呑まれそう……!)





リアは少し荒い息のまま辺りを見渡した。

「…え……。」

――違う。

「え?何で…私…ここに……。」

ここはリアにとっての



――地獄……。

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