「魔法の管理…?」
戒の目の前にいるこの女性確かにそう言った。
この人たちは池見の仲間なのかもしれない。しかし、安易にそう考えるのは危険である。
まず、池見たちの研究は極秘であり、人前では決して使わないでほしいと言ったことからも安易に人に話していけないことがわかる。
次に目の前に女性は魔法を『管理』していると言った。
つまりここで池見たちの研究がばれればそれを彼女たち『管理』されることを意味する。
池見たちは当然そんなことは望んではいないだろう。
戒は魔法に関してはしらばっくれることにした。
「魔法ですか…。そんなもの…」
「ないなんて戒君は言わないわよね。」
相変わらずニッコリとした表情で女性は割って入る。
しかし、表情は変わっていなくても場の空気ががらりと変わっている。
この女性は何か知っている。
戒はごくりと唾を飲んだ。
「戒君は知ってるはずよ。魔法を。だって戒君は葵がものすごい速さで男を叩きのめす見たでしょう。それなのにさっき質問にはそれは挙がらなかった。それって変でしょ?」
「いえ、あの気が動転してて…。」
心臓の鼓動が速さなっていくのを戒は感じた。
確実にこの女性は戒に探りを入れている。
「気が動転してた?それはそうでしょう。目の前で幼なじみが凄いことになってるだから。だから真っ先にそのことについて聞くでしょう。それを聞かなかったってことは戒君はそのことを納得していた、つまりそれを納得できるような体験をしたことがあるということ。」
再び戒は唾を飲む。
喉が痛い。
「え…あ、あの…」
「最後に戒君からは魔法の匂いがするのよ。魔法が使える人間が放つ特殊な匂いがね。」
「匂い?」
「そう、匂い。ほんとに近くでないとわからないものだけど、治療のときにスタッフが気付いたわ。」
もうこれは会話などでは無かった。
これは魔法管理者で彼女の戒の尋問だった。
彼女の言葉は戒に考える余裕を与えない。
「でもね、戒君安心して。別に私たちは戒君が魔法を使えることを咎めているわけではないのよ。ただ、どうやってそれを使えるようになったか知りたいの。」
優しく目の前の女性はそう呟いた。
しかし、池見たちの情報をそう簡単にもらす訳にはいかない。
「あの…自分でもよくわかりません。」
「そう、自分でもよくわからないの。」
彼女が優しくそう言ったかと思った瞬間。
ヒュンと何かがもの凄いスピードで戒の顔をかすめた。
後ろを振り返るとコンクリートの壁にナイフが根元まで突き刺さっていた。
当たってもいないのに戒の頬からは血が流れる。
「嘘はよくないわ、戒君。」
女性は笑っていたが、放たれていたのはもう殺気になっていた。