天使のすむ湖53

雪美  2006-09-13投稿
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翌日の午後、香里は黄色い蝶の模様浴衣に身を包み、髪をアップヘアーにしていて、うなじが色っぽくて、ドキドキしていた。俺にも昔香里の父が着たと言う、格子模様の浴衣をキヨさんが着付けてくれた。履きなれない下駄をカラコロ言わせながら歩いた。
さすがに俺のバイクで行くわけには行かないので、キヨさんが自家用車の赤のミニクーパーに乗せて、祭り会場まで送ってくれた。
神社につくと、笛の音やお囃子がにぎやかに聞こえていた。すごい人ごみで、手をつながないとはぐれてしまいそうだった。出店もたべくさん出ていて、バナナチョコやリンゴ飴の小さいのを少しずつだが食べたりした。
「こんなの食べたのはじめてよ〜」
そういってはしゃいで、香里は見るもの全てが珍しく、きょろきょろ見回していた。
「神社もこんなににぎやかなのは始めてー」
そう、お参りの仕方も知らなくて、
「こうして、お賽銭と言って、小銭を賽銭箱に入れて、この鈴のひもを引っ張って鳴らすだろうーそしたら手を合わせて、願い事をするんだ。心の中でねー」
香里は素直に真似て、一緒にガラガラと鈴を鳴らすとパンパンと手を叩いて、静かにお願い事をしていた。
「何お願いしたの?」
と俺が聞くと、
「一樹ともっと一緒にいられますようによ」
と木陰で、俺のほっぺにキスをしてくれたのが嬉しくて、ぎゅっと抱きしめた。
「一樹それじゃ苦しいよ〜」
少し力が入りすぎていたようで、
「ごめんね、もう少しだけ、こうしていたいんだ。」
人がまばらに通るところとはいえ、じろじろ見られるのも構わずに、そっと力を緩めながら、今度は唇に俺から口付けた。
目を開くと、少し恥ずかしそうにうつむいている香里がたまらなくて、もう一度抱きしめた。
ドキドキが止まらなくて、香里に聞こえてしまうのではないかと心配なくらいで、周りが目に入らないほど、二人だけの世界に浸っていた。
そばには鯉のいる池があり、鯉がポチャリと跳ねていた。


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