廊下を走る音がする。
「レクス!」
さっきまでそこにいたのにもういない。
そのことに内心焦る。
「レクス……。どこにいるの?」
(今すぐ会って伝えたいのに。)
どれくらい探しただろうか。
またあの場所に来ている。
(ゼイルに来ちゃ駄目だって言われたばっかなのに……。)
真っ暗で薄ら寒い空間と一人という心細さについ涙ぐむ。
「ここじゃないかもしんないし、もう帰ろっかな……。」
弱音が悲しく木霊した。
それさえも怖くて足が止まった。
普段なら行き帰りは灯りがあって明るいのに、今は真っ暗。
「もうやだ……。」
涙を乱暴に拭い、本来の目的も忘れて呟く。
その一瞬、後ろから人の気配がした。
「――ゃっ!?」
口を布で塞がれる。
見上げると過去に何度も見たあの人だった。
「黙ってろよ。リア。」
恐怖でぎこちなく頷くと同時に涙が零れ落ちる。
「いい子だ。」
壁にゆっくりと押し付けられ完全に身動きを取れなくされる。
それと同時に激しい眠気が襲ってきた。
(睡…眠…薬……?)
リアの思考もそこまでで深い眠りに落ちた。
『リア、俺が守るから。だからリアも――。』
レクスに伝えられなかった。
早く伝えないと……。
エリーにレクスが取られる前に……。
早く……。
好きだよって。
私もあなたを愛してるから心配しないでって……。
――レクスが好き……。
幸せな夢。
ずっと見ていたかった。