悪魔の天使 (39)

暁 沙那 2011-09-23投稿
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廊下を走る音がする。

「レクス!」

さっきまでそこにいたのにもういない。

そのことに内心焦る。

「レクス……。どこにいるの?」

(今すぐ会って伝えたいのに。)





どれくらい探しただろうか。

またあの場所に来ている。
(ゼイルに来ちゃ駄目だって言われたばっかなのに……。)

真っ暗で薄ら寒い空間と一人という心細さについ涙ぐむ。

「ここじゃないかもしんないし、もう帰ろっかな……。」

弱音が悲しく木霊した。

それさえも怖くて足が止まった。

普段なら行き帰りは灯りがあって明るいのに、今は真っ暗。

「もうやだ……。」

涙を乱暴に拭い、本来の目的も忘れて呟く。

その一瞬、後ろから人の気配がした。

「――ゃっ!?」

口を布で塞がれる。

見上げると過去に何度も見たあの人だった。

「黙ってろよ。リア。」

恐怖でぎこちなく頷くと同時に涙が零れ落ちる。

「いい子だ。」

壁にゆっくりと押し付けられ完全に身動きを取れなくされる。

それと同時に激しい眠気が襲ってきた。

(睡…眠…薬……?)

リアの思考もそこまでで深い眠りに落ちた。





『リア、俺が守るから。だからリアも――。』

レクスに伝えられなかった。

早く伝えないと……。

エリーにレクスが取られる前に……。

早く……。

好きだよって。

私もあなたを愛してるから心配しないでって……。

――レクスが好き……。





幸せな夢。
ずっと見ていたかった。



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