悪魔の天使 (40)

暁 沙那 2011-09-24投稿
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変な夢を見た。

どこかで見たことがあるような、というか体験した気がする夢。

夢だと信じたかった。



『リア、ごめん……。』

どうして謝るの?

『――すね?』

夢の中のリアは涙をこらえて頷いた。
今にも泣き出しそうな、それでもちゃんとした笑顔を浮かべて。

『ごめん…ごめんね……リア……。』

何かを言った気がする。

もう覚えてない。



「――…クス?」

うっすらと目を開けた。

無意識に手を伸ばそうとすると途中で何かに止められた。

何かと思い手の方に目をやる。

その瞬間何があったのかを全て思い出した。

白く細い手首に嵌められていたのは鉄枷。

それも魔法界の牢獄で使用されていると言われている、魔力封じの石の混ざった鉄。

(眠らされている間にこれ、付けられちゃったんだ。)

大体の見当はついていたが一応辺りを見回して見る。

(やっぱりね……。)

リアが真っ白なシーツが敷かれたベッドの上だ。

薄着にされている。

片手片足、手と足で反対側の方を鉄枷と鎖で繋がれ、首にも首輪と鎖。

犬以下の扱いを受けることが簡単に予想された。

「旦那様がいらっしゃいました。」

さっきは誰もいなかった方から声が聞こえた。

瞳に光の無い少女―首には首輪と途中で切れた鎖が付けられている―が言ったすぐ後に扉が開いた。

「今日も綺麗だ。」

そう言ったのは今ではお決まりとも言える、太った中年貴族。

その男は彼女を抱き寄せると唇を重ね、自分のそれを彼女の身体に這わせて下に下りていった。

彼女は何も言わない。

ただただ終わるのを待っている、そういった素振りさえ見せない。

諦めきっているのだ。

それを見たリアは、手だけはどうにかしようと必死に、下に向かって力を込める。

(やだ……!絶対嫌!あんな風には…人形にはなりたくない!!)

前は偶然にもレクスが助けてくれた。

でも流石に今回は来れないだろう。

結界が張ってあるから。

男はしばらくの間彼女を弄び、部屋を出させた。

リアと二人きりになる。

「あなたは?」

男を睨み上げながら尋ねた。

「何だ…それは……。」
「――え…」

男が低く唸ったかと思うと頬に激しい痛みを覚える。

口の中が切れたのか、薄く開いた口の端から血が垂れた。

手を熱くなってきた頬に当てる。

そして不安げな色を称えた目を男に向けるのだった。

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