変な夢を見た。
どこかで見たことがあるような、というか体験した気がする夢。
夢だと信じたかった。
『リア、ごめん……。』
どうして謝るの?
『――すね?』
夢の中のリアは涙をこらえて頷いた。
今にも泣き出しそうな、それでもちゃんとした笑顔を浮かべて。
『ごめん…ごめんね……リア……。』
何かを言った気がする。
もう覚えてない。
「――…クス?」
うっすらと目を開けた。
無意識に手を伸ばそうとすると途中で何かに止められた。
何かと思い手の方に目をやる。
その瞬間何があったのかを全て思い出した。
白く細い手首に嵌められていたのは鉄枷。
それも魔法界の牢獄で使用されていると言われている、魔力封じの石の混ざった鉄。
(眠らされている間にこれ、付けられちゃったんだ。)
大体の見当はついていたが一応辺りを見回して見る。
(やっぱりね……。)
リアが真っ白なシーツが敷かれたベッドの上だ。
薄着にされている。
片手片足、手と足で反対側の方を鉄枷と鎖で繋がれ、首にも首輪と鎖。
犬以下の扱いを受けることが簡単に予想された。
「旦那様がいらっしゃいました。」
さっきは誰もいなかった方から声が聞こえた。
瞳に光の無い少女―首には首輪と途中で切れた鎖が付けられている―が言ったすぐ後に扉が開いた。
「今日も綺麗だ。」
そう言ったのは今ではお決まりとも言える、太った中年貴族。
その男は彼女を抱き寄せると唇を重ね、自分のそれを彼女の身体に這わせて下に下りていった。
彼女は何も言わない。
ただただ終わるのを待っている、そういった素振りさえ見せない。
諦めきっているのだ。
それを見たリアは、手だけはどうにかしようと必死に、下に向かって力を込める。
(やだ……!絶対嫌!あんな風には…人形にはなりたくない!!)
前は偶然にもレクスが助けてくれた。
でも流石に今回は来れないだろう。
結界が張ってあるから。
男はしばらくの間彼女を弄び、部屋を出させた。
リアと二人きりになる。
「あなたは?」
男を睨み上げながら尋ねた。
「何だ…それは……。」
「――え…」
男が低く唸ったかと思うと頬に激しい痛みを覚える。
口の中が切れたのか、薄く開いた口の端から血が垂れた。
手を熱くなってきた頬に当てる。
そして不安げな色を称えた目を男に向けるのだった。