男はリアに近付くと太った指で血を拭い取った。
露骨に嫌そうな顔を優しく撫で、また叩く。
それを繰り返され、息が上がってきたリアを男は押し倒した。
「――っ!やぁ!!」
リアは鎖もなんもかんも無視して暴れた。
「大人しくし…」
「いやああああっ!!!!」
自由な方の手足で必死に暴れるも、すぐに駆けつけてきた男達に掴まえられ抵抗出来なくされる。
手の鎖は短くされ、足もほとんど自由がない。
「いやぁ……。もう止めて……。」
リアはもうどうすることもできなくて力なく泣くことだけをした。
「しおらしいな。それもまた一興。」
男の顔がゆっくりと降りてきて……。
思考を止めた。
レクスにだけは会いたくない。
見られたくない。
知られたくない。
お願い、神様。
彼に知られるくらいならいっそここに縛って下さい。
…お願い……。
彼との記憶を棄てた。
その日からだ。
全ての抵抗を止めたのは。
「リア。」
男に呼ばれればすぐに行った。
作り笑いだってした。
あれほど嫌がった口づけも求められればした。
決して自分からはしたりしない。
夜は泣いた。
声も上げずに。
何故かも分からぬまま泣いた。
眠らなくなった。
眠れなくなった。
何も口にしなくなった。
何も口に出来なくなった。
光が消えた。
あれから一ヶ月が過ぎようとしていた。
「リアは?」
「分からない。最後に会ったのは多分私よ。あんたを追いかけてどっかに行って…それっきりよ……。」
「これ。俺宛の手紙。」
手紙にはリアのこと、リアの写真、リアにあげた指輪が同じ封筒に入れてあった。
写真には縛られた状態でぐったりとしているリアが写っていた。
服は薄着の上、太ももら辺に乱暴にはだけられたスカート。
涙の跡。
頬の赤み。
口元の血。
全てが腹立たしかった。
リアをとられたこと。
泣かせたこと。
全て。
「リア……!!」
必ず助ける!!